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令和6年11月21日
引用元:日本経済新聞
国に無登録で外国為替証拠金(FX)取引を提供する業者のトラブルが絶えない。足元ではプロ投資家の売買をまねる「ミラートレード」を紹介し、「素人でも利益を出せる」とうたう勧誘手法が目立つ。FX取引の初心者が誘い込まれやすい。
警視庁は11日、FX取引サイト「APPOS Reward」の運営者を金融商品取引法違反(無登録営業)の疑いで摘発した。約1500人の顧客から計約16億円を集金したが、FX取引に必要な「第一種金融商品取引業」の登録を国にしていなかったとされる。
取引サイトが集客の呼び水としていたのがミラートレードだ。著名な投資家らが考えた売買ルールを組み込んだプログラムに沿って自動で取引する。プロの実際の取引をまねする「コピートレード」という類似手法もある。いずれも顧客は取引内容を考える手間が省ける利点があるとされ、利用は違法ではない。
警視庁によると業者とともに摘発された投資スクール代表は「FX取引で素人が利益を出すのは難しい。ミラートレードで専門家に任せれば確実にもうかる」と顧客に説明していたという。しかし事業は停止され、違法営業と発覚。顧客への返金は確認されていない。
金融庁が10月に無登録として警告を出したFX業者も「優秀なトレーダーの取引を完全自動でコピー」「FX初心者にもピッタリ」と同様の手法を宣伝していた。関係者によると、この業者も口座からの出金を巡り顧客とトラブルになっているという。
国民生活センターによると、2023年度に全国の消費生活センターなどに寄せられたFX取引に関する相談は4327件に上り増加傾向にある。担当者は「SNSを通じた勧誘が増えたのが要因の一つ」と話す。ミラートレードを巡る相談も含まれているという。
ファイナンシャルプランナーの高山一恵氏はミラートレードについて「自ら判断せずに取引できる手法は初心者にとって魅力的かもしれない」とみる。一方「為替の動向を見極めるのはプロでも難しく、利益を出し続けるのは容易ではない」と指摘する。
FX業者を選ぶうえでは国への登録があるかどうかが重要になる。金商法は国内でFX取引を扱う場合に登録を義務付けている。口座の資金よりも運用額を大きくする「証拠金倍率(レバレッジ)」の高さや、顧客資産の保全についても法令で定めている。
金融庁担当者によると最近、海外を含め無登録業者によるSNS上の勧誘が目立ってきた。同庁は23年度、無登録業者に対して33件の警告を出した。警告件数は過去10年でみると14年度(150件)をピークにいったん減少したが、近年再び増えている。
無登録業者の場合には国の監視が届きにくく、問題が生じた場合に投資資金の回収などが難しい場合がある。関東財務局は「誰でも簡単にもうかる」とうたう海外の無登録FX業者が絡むトラブルが増えているとして、SNSを通じ注意を呼びかけている。
「貯蓄から投資へ」という政策を受け投資への関心は高まっている。FX取引も活況で、金融先物取引業協会によると24年1~10月の店頭FX取引額(速報ベース)は約1京1500兆円に上り通年ベースでは3年連続で1京円を超えた。
投資詐欺被害に詳しい佐久間大地弁護士は「スマホを通じた投資が浸透した一方、SNS上の助言をうのみにしてしまう人も少なくない」と指摘する。
安心して投資できる環境を保つため「詐欺的な勧誘が目立つSNSのプラットフォーマーへの規制を厳しくすべきだ。行政処分や捜査当局の取り締まりを強化したうえ、違法業者に対しての厳罰化も検討する必要がある」と強調した。