投資詐欺 老後資金狙う 5年で相談倍増 50代が最多に 未公開株・社債装い勧誘(日本経済新聞より)

令和6年6月25日
引用元:日本経済新聞

 

中高年の老後資金を標的とした投資詐欺が後を絶たない。警視庁が5~6月に金融商品取引法違反容疑などで摘発した投資コンサルタント会社もライフプラン見直しの相談に乗るかたちで、社債購入を勧誘していた。投資をうたい資金をだまし取る商法に関する警察への相談は5年で倍増し、同庁は注意を呼びかけている。

 

「少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)よりおすすめ」
「購入費の20%が5年間配当金として確実に受け取れる。5年後には元本が必ず戻ってくる」

 

事業実態がなく資金繰りが逼迫していたにもかかわらず、提携する信用保証会社の社債購入を勧誘したとして警視庁は4日までに、投資コンサル会社役員や元社員ら計10人を金商法違反や詐欺の疑いで逮捕した。

 

2017年2月~23年2月ごろ、株式の出資や社債の購入を巡って36都府県の延べ約1300人から総額約80億円を集めたとみられる。

 

捜査関係者によると、詐欺グループの標的となったのは老後資金の確保や運用を考える中高年。資産形成に興味を持ち始めた新社会人にも接触していた。ファイナンシャルプランナー(FP)を名乗り、老後資金の運用やライフプランの見直しについて相談を受けるなかで、提携会社の株式や社債を勧めていた。

 

用いられたのは「ポンジ・スキーム」という仕組みだ。集めた資金を実際には運用せず、他の出資者から得た資金をそのまま利子や配当金と偽って支払っていた。自転車操業に陥って23年2月ごろから利子の支払いが滞り、元本を戻せない出資者には「(契約期間を)延長しないか」と持ちかけていたという。

 

今回のケースのような未公開株や社債の取引を装って勧誘し出資金をだまし取る「利殖勧誘事犯」について、23年に全国の警察が受理した相談件数は3155件と5年間で倍増した。相談者の中心は中高年で、50代が最多の23.1%を占め、40代(19%)、60代(15.6%)と続く。

 

被害相談までに要した時間は、最初に金銭を支払った日から1カ月以上後になったケースが1630件と半数を占める。ポンジ・スキームでは、初めは配当や利子が支払われるため、被害に気づくのに時間を要する傾向があるという。

 

最近被害が目立つ著名人の偽広告などを入り口とするSNS型投資詐欺では、詐欺グループ側が被害者と時間をかけてSNSでやり取りして信頼関係を築くため、長期間にわたり金を何度もだまし取られるケースが目立つ。

 

投資詐欺が絶えない背景についてFPの高山一恵氏は投資熱の高まりを挙げる。「物価高で生活が苦しくなる中で賃上げの将来が描けず、投資を始めて大きくお金を増やそうと考える人が老若男女問わず増えている」という。

 

投資信託協会が20~70代の2万人に対し23年9月に実施したアンケートでは、投資信託を購入したことがある人のうち目的に「老後の生活資金」を挙げた人は53.9%で最も多かった。NISAや1月開始の新NISAで投資へのハードルが下がり、日本証券業協会によると、証券会社10社で1~4月に新設されたNISA口座は計約197万件で、前年同期比約2.8倍だった。

 

詐欺被害を防ぐには個人が金融リテラシーを高める必要がある。

 

「元本を保証する」「高配当を得られる」などとうたう投資話は詐欺の可能性が高いとして警察などが警戒を呼びかけている。金融庁もホームページで投資に関する知識などを掲載している。

 

高山氏は「インターネット上には投資に関する情報があふれているが玉石混交のため、信用できる発信元かどうかを確かめてほしい」と呼びかける。

 

 

   

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