国際ロマンス詐欺の悪質手口 4600万円を騙し取られた被害者が告発

 

令和4年3月14日
引用元:NEWSポストセブン

 

インターネットを介して簡単に出会えるが、コロナ禍を理由に直接会わず、言葉の壁があるため詐欺が見破られにくい。まさに現代社会の落とし穴が生んだ犯罪といえる国際ロマンス詐欺。中高年や既婚者も他人事ではない。ノンフィクションライターの水谷竹秀氏が、その悪質な手口をレポートする。

 

100万円、400万円、500万円、900万円、1000万円……。日を追うごとに追加される送金額を足していくと、わずか2週間のうちに、仮想通貨の取引に費やされた総額は4600万円に上った。その後に出金できなくなり、国際ロマンス詐欺だと気づいたときにはもう、手遅れだった。

 

「ショックで立てなくなりました。これからどうやって生きていこう、どうやってお金を返していこうと」

 

都内のマンションの一室でそう嘆息するのは、ネット通販などを営む会社経営者、町田美穂さん(40代・仮名)。昨年6月に被害に遭って以降、失意の日々が続く。

 

「悲しいという気持ちを通り越しています。いっそのことコロナに感染して死んだ方が楽になれると思い、ワクチン接種を一時的に拒否したこともありました」(美穂さん)

 

国際ロマンス詐欺とは、マッチングアプリなどで出会った外国人の異性と親しくなり、仮想通貨への投資話を持ち掛けられるなどで、金銭を詐取される特殊詐欺の一種だ。

 

相手のアカウントのプロフィール写真は端整な顔立ちの欧米系が多いが、最近はアジア系も増えている。写真は実在する人物だが、犯人がインターネット上から無断で使用している別人で、被害者が実際にやり取りしている相手ではない。つまりは仮面をかぶった“詐欺師”なのだ。

 

この国境を超えた「愛のささやき」による詐欺被害がいま、コロナ禍で急増している。国民生活センターによると、同様の被害の相談件数は2019年度の5件から2020年度には84件に跳ね上がり、昨年は170件にも上った。被害者は警察に直接相談する場合も多いため、この数字は氷山の一角に過ぎない。増加の背景には、コロナ禍によって対面での食事の場が減少したことがあるという。

 

 

警察は動かない。現金回収も困難

 

 

美穂さんがマッチングアプリを始めたのは昨年5月。夫と離婚して子供2人を育て上げ、知人の誘いでビジネスの場を東京に移して1年が過ぎた頃だった。

 

「恋人が真剣に欲しいというより、できたらいいなという思いでした」(美穂さん)

 

登録した日に、「ポール」という56才の外国人男性とマッチングが成立した。筋肉質で髪は短く、彫りの深い顔立ち。国籍は「フランス」で居住地は「東京」、職業は「金融系」と記されていた。すぐにLINEでのやり取りに移行し、親しくなった。ポールからの返信は、翻訳機能を使った日本語だった。

 

《このソフトを使って間もなくあなたのような優しい女の子に出会うとは思いませんでした!》

 

マッチングから数日後には彼からこんな話が飛び出した。

 

《ポールは外国為替取引をしています。コロナで経済は影響を受けましたが、投資業界は上昇傾向にあります》

 

そして仮想通貨への投資を持ち掛けられる。最初は半信半疑だったが、ポールの指示で練習の「模擬取引」をしてみると、利益が出た。ポールからのメッセージも、
《きみを愛している》
《永遠に一緒にいたい》
などと愛情表現がエスカレート。その気にさせられた美穂さんは、仮想通貨取引所に口座を開設し、現金100万円を投入する。

 

《私たち2人の家を買うことができると思います》

 

そんなポールの口車にも乗せられ、美穂さんは投資額を増やしていく。途中で50万円の利益が通帳に還元されてさらに信用してしまい、会社の存続のために受けたコロナ融資800万円、友人たちから借りた金もつぎ込んだ。

 

それでもポールから「元金が足りない」とせがまれた。「これ以上は出せない」と断ると、ポールから美穂さんの仮想通貨の口座に「5200万円を送金しました」とメッセージが入り、投資額が一気に増えた。そこで異変が起きる。

 

《僕のお金が出金できなくなった。引き出すために美穂は2700万円を振り込まなければならない》

 

投資額の大きさにすでに怖くなっていた美穂さんはもはや、正常な判断ができなくなっていた。

 

「要求額を支払わないとポールが出金できず、私は犯罪者になってしまうのか」

 

美穂さんは親族に借金を申し出て、2700万円を調達。それでも一向に出金できないどころか《税金を支払ってください》と追加請求が続いたため、ようやく目が覚めた。4600万円は仮想通貨の口座からいつの間にか消えてしまい、挙げ句、ポールは壊れたレコードのように《お金を返してください》と繰り返すのみ。警察に駆け込むもすべては後の祭りだった。

 

「ポールと知り合ったのは、新しい仕事が不調で、胃潰瘍になって精神的にも参っていたときでした。私は人を信じやすく、おまけにポールとのやり取りは楽しかったので、現実逃避してしまったのかもしれません……」(美穂さん)

 

その代償はあまりにも大きい。親族への借金返済のために車やパソコンを売却。さらに日々の食費も節約するなど苦しい生活を強いられている。

 

被害者はシングルマザーや独身者など、いわゆる「おひとりさま」だけに限らない。関東地方在住の宮本香奈さん(30代・仮名)は現在、夫と保育園児の息子と暮らしている。夫とは子育てをめぐって数年前から不仲になった。昨年秋、インスタグラムを介して、「米国育ち」のイケメンと知り合った。

 

翻訳アプリを使ってやり取りをするうちに甘言に乗せられ、「日本に住むきみへのプレゼント搬送料」などと次から次へと送金を促され、総額360万円を騙し取られた。このうち100万円は母に負担してもらうほど、相手にぞっこんだった。

 

「電話も頻繁に掛かってきました。『息子は元気か?』などと気に掛けてくれたので、信用してしまいました。夫との関係も終わらせる覚悟でした」(香奈さん)

 

我に返ったのは、相手からの連絡が途絶えたときだった。

 

「犯人を許せません。母も私を止められずに後悔していました。警察に相談したけど、相手が外国に住んでいることもあり、なかなか動いてくれません」(香奈さん)

 

コロナ禍で横行する国際ロマンス詐欺――被害者は大金を騙し取られたまま、泣き寝入りするしかないのか。投資詐欺に詳しい正木健司弁護士はこう言う。

 

「銀行口座に振り込まれた場合は口座凍結による現金回収が可能ですが、仮想通貨への投資詐欺については犯人の特定が難しく、回収は困難です。

 

重要なのは、“詐欺の可能性”に気づけるかどうか。素性がはっきりせず、会ったこともない相手に儲け話を持ち掛けられても、安易に信用してはいけません。短期間で大きな利益が出る、そんなおいしい話はないですから」

 

投資詐欺に取り組む一部の弁護士は現在、犯人の特定に向け、加害者情報の迅速な開示をマッチングアプリの運営会社に求めている。

 

※女性セブン2022年3月24日号

 

 

 

 

該当する方は早めに専門家へ相談してください。
専門でないと、
「あきらめなさい」
「どうせ取り返せない」などと言われます。

 

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