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令和3年6月23日
引用元:毎日新聞
外国人を名乗りインターネットを通じて知り合った日本人に恋愛感情を抱かせ、お金をだまし取る「国際ロマンス詐欺」の被害が広がっている。警察は6月までに詐欺に関与したとされる外国人ら15人を摘発した。人と人とが直接顔を合わせ、語らうことが大きく制限された新型コロナウイルス下。「好きだ」「理想の相手だ」とSNSで「運命の赤い糸」を演出する手口で、女性らの心の隙間(すきま)につけ込み、被害総額は1億円以上にのぼるとみられている。
2020年8月、新潟県の女性(52)は、写真共有アプリ「インスタグラム」で「アメリカ人の医師」を名乗る男性の写真に目が留まった。犬と一緒に写る姿に何気なく、スマホで「いいね」を押した。間もなく、メッセージが送られてきた。
英語と日本語を交えて世間話をするようになり、この医師は「シリアに住み、兵士を治療している」と身上を説明した。他愛もない話が続き、メッセージをやり取りする回数が増えてきたころ、熱烈なアプローチが始まった。「マイスイートハニー、あなたが好きだ。結婚したい」「シリアで仕事を終えたら日本で一緒に住みたい」。突然の申し出は断ったものの女性はこの医師に好意を抱いていた。
最初のやり取りから1カ月、「現金50万ドルが入った荷物を日本に送りたい」と伝えてきた。ただ、経由する中国の運輸省に「承認料」や「運送費」の支払いが必要になるという。女性は言われた通り、指定された国内の銀行口座に60万円を振り込んだ。その後、4回、同じような要求が繰り返された。ただ、6回目の要求で「日本の公安への費用が必要」と告げられ、手続き費用が約5万ドルから約2万ドルに「値引き」されたことに不審を抱いた。11月、警察に被害届を提出した。この女性の被害は総額1177万円にのぼった。
軍の医師、軍人、戦場ジャーナリストらを名乗り、SNSで接点を持った女性にアプローチをかけ、現金を要求する手口は、他の被害でも共通している。
神奈川県の女性(61)は21年2月、フェイスブックで自称韓国人医師の男性から友達申請されたことを機に、無料通信アプリ「LINE」でのやりとりを始めた。その後、プロポーズを受け、「イエメンで兵士の治療をしている」とし、整形外科の治療で得た20億ドルを日本の医療従事者に寄付するための配送料を要求された。女性は計約420万円を指定された国内の銀行口座に振り込んだ。詐欺と分かった後、女性は警察に「理想の相手と言われてうれしかった」と話したという。
◇指示役の拠点は海外か
こうした「ロマンス詐欺」に関わったとして6月までに、兵庫、新潟、栃木、奈良の4県警でつくる合同捜査本部は兵庫県内の小学校の英語講師、ティバー・スコット・ター容疑者(31)=カメルーン国籍=ら23~68歳の男女15人を詐欺や犯罪収益移転防止法違反などの疑いで摘発した。国籍はナイジェリアやベトナム、日本とさまざまだ。
捜査本部は15人が、いくつかのグループに分かれて行動し、口座の準備や国内で現金を引き出すなど役割を分担していたとみている。ティバー容疑者のグループは、夫婦一組を含むカメルーン国籍の男女4人。大阪府や神戸市に住み、知人同士だった。現金の回収を巡り指示役だったとされるティバー容疑者は「知らなかった」と供述し、容疑を否認しているという。
捜査本部が見込む被害者は男女10人超、被害額は1億円以上。被害者が国内の口座に振り込んだ現金の大半は海外に送金され、SNSでメッセージを送る人物や、全体像を知る指示役は海外を拠点としているとみられ、摘発には至っていない。
◇巧みなマインドコントロールに注意
被害情報を集め注意を呼びかけるサイト「ストップ!国際ロマンス詐欺」を運営するカウンセラーの新川てるえさんは、「巧みなマインドコントロールに注意してほしい」と話す。
新川さんによると詐欺グループの手口は、本物に見まがう偽造身分証の写真を見せ、被害者の信用を得る。接点を持つと、「おはよう」から始まり、一日に何十通もメッセージを送信。メッセージ交換は3カ月以上続くケースもあるという。日々、「愛している」と告げ、プレゼントと称してぬいぐるみを贈ってくることもある。被害者に「親密さ」を感じさせ、金銭の要求時は「今すぐに振り込んでほしい」と告げ、考える時間を与えないのが特徴だという。
新川さんは「コロナ下で自由な外出が制限されて人との出会いが減り、ネットでの交流を求めて被害に遭う人が増えているのではないか。誰もが被害者になる可能性がある」と警告する。国際ロマンス詐欺の相談は兵庫県警に初めて寄せられた17年から現在まで約100件にのぼる。うち8割がコロナ下の20年1月から21年6月に集中している。県警国際捜査課は「少しでも不審に思ったら要求に応じず、すぐに警察に相談してほしい」と呼び掛けている。
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