かんぽ不正、社内調査の結果公表へ 年内にも行政処分か

かんぽ不正、社内調査の結果公表へ 年内にも行政処分か

令和元年12月16日
引用:朝日新聞デジタル

 

かんぽ生命保険で不正販売が多数発覚した問題で、日本郵政は18日、今夏からの社内調査の結果を公表する。日本郵政が設置した特別調査委員会も同日、最終報告書を公表する。

 

18日には特別調査委の伊藤委員長らが記者会見し、その後、日本郵政の長門正貢社長、日本郵便の横山邦男社長、かんぽ生命の植平光彦社長も会見する予定。

 

かんぽは契約全体のうち、顧客に不利益を与えた疑いがある契約18・3万件(契約者は約15・6万人)について優先的に調査している。9月末時点で約5・9万人に聞き取りした結果、法令・社内規定違反の疑いが6300件あった。

 

その後の調査で連絡がついた顧客は約12万人に増え、法令・社内規定違反の疑いがある件数も大幅に膨らむ見通しだ。特別調査委の最終報告では、日本郵政のガバナンス( 企業統治)が機能不全に陥っていた原因や役員の責任についてどう評価するかも注目される。

 

金融庁は9月からかんぽと日本郵便への立ち入り検査に入っており、日本郵政の調査結果や特別調査委の報告内容も踏まえ、年内にも行政処分を出すとみられる。

 

かんぽ・日本郵便に保険販売で業務停止命令へ 金融庁

令和元年12月16日
引用:日本経済新聞

 

金融庁は16日、不適切な保険販売を受け、かんぽ生命保険と日本郵便に対し、保険業法に基づいて保険販売を対象に業務停止命令を出す方向で検討に入った。顧客に虚偽の説明をして保険料を二重に取るなどの法令違反があったと判断した。日本郵政グループの経営責任の明確化も求める。法令・社内規定違反が疑われる契約が現段階で1万2836件に膨らんでいることも分かった。

 

年内に処分内容を最終判断する。業務停止の範囲は問題のあった保険販売に絡む部分で、郵便や貯金の取り扱いを含む他の業務は影響を受けない。

 

金融庁はあわせて持ち株会社の日本郵政に対して業務改善命令を出す方向だ。再発防止に向けて内部管理体制の強化など抜本的な改善策を求める。総務省も日本郵政と日本郵便に業務改善命令を出す見通しだ。

金融庁は今春、かんぽの販売手法に不正が疑われる点があるとして報告徴求命令を出した。9月からかんぽと日本郵便に検査に入るとともに、日本郵政の幹部からも聞き取り調査を進めてきた。

 

かんぽと日本郵便は不正発覚を受けて7月から保険販売の営業を自粛しており、2020年1月の販売再開をめざしていた。業務停止命令が出れば、保険販売は再び延期されそうだ。金融庁は法令違反の悪質性や再発防止策などを見極めたうえで、業務停止の期間を検討する。

 

郵政グループが18日に発表する顧客への調査結果では、法令・社内規定違反が疑われる契約が1万件を超える。9月末の中間報告時点の6327件から大きく膨らむ。販売員への聞き取り調査などを経て法令違反と確定した件数は現段階で48件、規定違反は622件になった。全容解明とはいえず、年明け以降も調査を続ける。

 

不適切販売をめぐっては、保険料の二重徴収や保険料の高い契約への乗り換えなど顧客に不利益を与えた可能性のある契約が14~18年度に18万3千件みつかった。金融庁は悪質な販売行為が営業現場にまん延していたとみている。

 

不正が広がった原因として企業統治(ガバナンス)の欠如も問題視されている。郵政グループの特別調査委員会は9月時点の報告で、社内で不適切販売がみつかっても軽視し、営業職員が法令を守る意識が低かったと指摘した。新規契約獲得に偏った目標設定や評価体系が営業現場にひずみを生んだと問題視した。金融庁はこうした点を検査で確認したとみられる。

 

今後は経営陣の責任に焦点が移る。現場でみつかった問題がグループで適切に共有されず、対応は後手に回った。18日には特別調査委の最終報告が公表される。

 

かんぽ・郵便、一部業務停止へ 金融庁、保険不正販売で

令和元年12月16日
引用:共同通信

 

金融庁は16日、大規模な保険の不正販売が発覚したかんぽ生命保険と日本郵便に対し、27日にも保険業法に基づき、保険販売など一部の業務停止命令を出す方向で検討に入った。両社が同命令を受けるのは初めて。日本郵政グループの社内調査結果の概要も判明し、法令や社内規定に違反した疑いのある契約は15日時点で1万2836件となり、これまで公表していた6327件から倍増した。このうち現時点で670件の違反を確認した。

 

金融庁は、670件の違反は不正の実態を過小評価している恐れがあるとみており、調査内容の精査を求めている。

 

 

日本郵政グループに対する行政処分について

令和元年12月27日
引用:金融庁

 

金融庁及び関東財務局は、本日、株式会社かんぽ生命保険(本店:東京都千代田区、法人番号 6010001112696、以下、「かんぽ生命」という)、日本郵便株式会社(本店:東京都千代田区、法人番号 1010001112577、以下「日本郵便」という)、及び日本郵政株式会社(本店:東京都千代田区、法人番号 5010001112697、以下「日本郵政」という)、に対し、下記のとおり行政処分を行いました。

 

 

Ⅰ.命令の内容

 

1.かんぽ生命

保険業法第132条第1項に基づく命令(業務停止命令及び業務改善命令)
(1)令和2年1月1日(水)から令和2年3月31日(火)までの間、かんぽ生命の保険商品に係る保険募集(生命保険募集人に委託しているものを含む。)及び保険契約の締結を停止すること。
(顧客からの自発的な意思表示を受けて行う保険募集及び保険契約の締結を除く。その他、当局が契約者保護の観点から必要とされる業務として個別に認めたものを除く。)


(2)適切な業務運営を確保し、保険契約者の保護を図るため、以下を実行すること。
① 今回の処分を踏まえた経営責任の明確化
② 顧客に不利益を生じさせた可能性の高い契約の特定、調査、契約復元等、適切な顧客対応の実施(「特定事案調査」の契約類型及びⅡ.1.に記載するそれ以外の不適正な募集行為の可能性がある契約類型を含む)
③ ②の調査により、不適正な募集行為を行ったと認められる募集人に対する適切な対応(事故判定・処分基準の厳格化と運用の徹底を含む)
④ 適正な営業推進態勢の確立(乗換を助長しない、かつ実態に即した営業目標の策定を含む)
⑤ コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成(適切な募集方針の策定・浸透や職員及び募集人に対する研修を含む)
⑥ 適正な募集管理態勢の確立(代理店に対する十分な牽制機能の構築を含む)
⑦ 上記を着実に実行し、定着を図るためのガバナンスの抜本的な強化


(3)上記(2)に係る業務の改善計画を令和2年1月末までに提出し、直ちに実行すること。


(4)上記(3)の改善計画について、当該計画の実施完了までの間、3ヶ月毎の進捗及び改善状況を翌月15日までに報告すること(初回報告基準日を令和2年2月末とする)。

 

2.日本郵便

保険業法第307条第1項に基づく命令(業務停止命令)
令和2年1月1日(水)から令和2年3月31日(火)までの間、かんぽ生命の保険商品に係る保険募集を停止すること。
(顧客からの自発的な意思表示を受けて行う保険募集を除く。その他、当局が契約者保護の観点から必要とされる業務として個別に認めたものを除く。)


保険業法第306条に基づく命令(業務改善命令)
(1)適切な業務運営を確保し、保険契約者の保護を図るため、以下を実行すること。
① 今回の処分を踏まえた経営責任の明確化
② 顧客に不利益を生じさせた可能性の高い契約について、かんぽ生命による調査結果を踏まえ、不適正な募集を行ったと認められる募集人に対する適切な対応(募集人に対する一定期間通常業務から離れた集中的な研修の実施を含む)
③ 適正な営業推進態勢の確立(乗換を助長しない、かつ実態に即した営業目標の策定や営業手当体系の構築を含む)
④ コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成(募集品質を適切に考慮した人事評価・表彰制度の構築や募集人に対する研修を含む)
⑤ 郵便局・支社・本社各部門における適正な募集管理態勢の確立
⑥ 上記を着実に実行し、定着を図るためのガバナンスの抜本的な強化


(2)上記(1)に係る業務の改善計画を令和2年1月末までに提出し、直ちに実行すること。


(3)上記(2)の改善計画について、当該計画の実施完了までの間、3ヶ月毎の進捗及び改善状況を翌月15日までに報告すること(初回報告基準日を令和2年2月末とする)。

 

3.日本郵政

保険業法第271条の29第1項に基づく命令(業務改善命令)
(1)かんぽ生命の適切な業務運営を確保し、保険契約者の保護を図るため、以下を実行すること。
① 今回の処分を踏まえた経営責任の明確化
② 保険持株会社としての実効的な統括・調整機能を発揮するためのグループガバナンス態勢の構築
③ 保険募集に関連した経営理念をグループ全体に浸透させるための態勢の構築
④ 上記を着実に実行し、定着を図るためのガバナンスの抜本的な強化


(2)上記(1)に係る業務の改善計画を令和2年1月末までに提出し、直ちに実行すること。


(3)上記(2)の改善計画について、当該計画の実施完了までの間、3ヶ月毎の進捗及び改善状況を翌月15日までに報告すること(初回報告基準日を令和2年2月末とする)。

 

Ⅱ.処分の理由


令和元年12月18日(水)付で公表されたかんぽ生命保険契約問題特別調査委員会の調査報告書も参考にしつつ、令和元年8月23日(金)を検査予告日として実施したかんぽ生命及び日本郵便に対する検査の結果やかんぽ生命・日本郵便・日本郵政(合わせて、以下、「3社」という)に対し保険業法第128条第1項等に基づき求めた報告を検証したところ、以下の不適正な募集行為及びその背景にある態勢上の問題が認められた。

1.不適正な募集行為

(1)かんぽ生命及び日本郵便が、2019年7月より「特定事案調査」として実態把握を行った契約において、かんぽ生命の保険商品に関し、以下のような不適正な募集行為(顧客に不利益になる、又は顧客にとって合理性のない契約であって当該顧客の意に沿わないものに係る保険募集)が認められた。
① 契約の乗換に際し、契約者に対して「一定期間解約はできない」「病歴の告知があっても加入可能」などの事実と異なる説明を行ったこと等により、契約の重複による二重払いや無保険期間の発生等の不利益を顧客に生じさせるなど、保険業法第300条第1項に違反するものが少なくとも67件認められた。
② 契約の乗換に際し、契約者に対して「自分の営業成績のために解約を遅らせてほしい」などの依頼を行い、契約の重複による二重払い等の不利益を顧客に生じさせるなど、社内ルールに違反するものが少なくとも662件認められた。
③ 上記に加えて、法令や社内ルールへの抵触如何にかかわらず、不適正な募集行為により顧客に契約を締結させ、顧客に不利益を生じさせた。


(2)また、かんぽ生命及び日本郵便が、「特定事案調査」として実態把握を行った契約類型以外にも、かんぽ生命の保険商品に関し、以下のような不適正な募集行為の可能性がある類型の存在が認められた。
・ 顧客の意向に沿わず、多数回にわたって契約の消滅・新規締結が繰り返されている類型
・ 顧客の意向に沿わず、多額の契約が締結され、高額の保険料が発生している類型
・ 顧客の意向に沿わず、既契約が解約され、既契約とは異なる被保険者で新契約が締結されている類型
・ 顧客の意向に沿わず、既契約が解約され、既契約とは異なる保険種類(年金から保険など)での新契約が締結されている類型
・ 顧客の意向に沿わず、既契約の保険期間が短縮され、短縮されてから短期間のうちに、新契約が締結されている類型


(3)更に、実際には、節税効果が見込めない保険商品であるにも関わらず、社内研修資料において、募集人に対し、相続税対策として顧客に説明・販売することを慫慂しているなど、不適正な募集行為を助長しかねない実態が認められた。


(4)なお、無効・合意解除(苦情を受けて解約・返金をしたもの)、未入金解除(初回保険料未払で解除)、1P失効・解約(初回保険料支払後に解除)、撤回(クーリングオフ)となっている契約が多数認められたが、これらの中には結果的に顧客に不利益が生じていない、または僅少ではあるものの、不適正な募集行為により、顧客の意向に沿わない契約が締結されていたものが含まれているおそれがある。

 

2.態勢上の問題

かんぽ生命及び日本郵便において、不適正な募集行為が広がった背景には、3社において、それぞれ以下のような態勢上の問題があったと認められた。

(1)かんぽ生命
① 過度な営業推進態勢
営業目標として乗換契約を含めた新規契約を過度に重視した不適正な募集行為を助長するおそれがある指標を使用し続けた上に、経営環境の悪化により、営業実績が振るわないことが想定されるにもかかわらず、具体的な実現可能性や合理性を欠いた営業目標を日本郵便とともに設定してきたこと。
② コンプライアンス・顧客保護の意識を欠いた組織風土
事故判定やその調査において、顧客に不利益が生じている場合であっても、契約者の署名を取得していることをもって顧客の意向に沿ったものと看做し、募集人が自認しない限りは事故とは認定せず、不適正な募集行為を行ったおそれのある募集人に対する適切な対応を行わず、コンプライアンス・顧客保護の意識を欠いた組織風土を助長したこと。
③ 脆弱な募集管理態勢
日本郵便の営業現場における募集活動の実態、募集人の営業目標や営業手当の状況、営業成績が優秀な者(以下、「優績者」という)に対する表彰の状況、各種研修の内容等を把握せず、委託者として保険代理店である日本郵便に対して、適正な募集管理態勢の構築に必要な指示を行なってこなかったこと。
また、第二線である募集管理統括部及びコンプライアンス統括部、苦情対応部門等に加え、日本郵便の営業現場を指導する支店パートナー部などに十分な人材配置を行っていないなど、業務の適切性を確保しうる募集管理態勢を整備してこなかったこと。
更には、日本郵便との間で十分な連携を図ることなく、適時に実効性の高い施策を実行してこなかったこと。
④ ガバナンスの機能不全
苦情、ありがとうコール(契約を締結した顧客に対する電話による事後的な意向確認)、多数契約の分析などに加え、メディアの報道や当局のヒアリング等により不適正な募集行為の端緒を把握していたにもかかわらず、十分な実態把握を行わず、営業活動に影響が生じることを懸念し、抜本的な改善を図ってこなかったこと。


(2)日本郵便
① 過度な営業推進態勢
かんぽ生命とともに具体的な実現可能性や合理性を欠いた営業目標を設定したこと。
更に、地域の状況や営業現場の実力を十分踏まえることなく募集人に目標を割り当て、加えて、郵便局が募集人に対し目標の上乗せを行うことなどにより、募集人にとって過大な目標を設定してきたこと。
また、乗換契約も含めた新規契約を過度に重視した営業手当の支給体系を維持してきたこと。
② コンプライアンス・顧客保護の意識を欠いた組織風土
募集人に対して、募集品質の維持・向上や保険営業に必要な知識の付与のための研修・指導を十分に行ってこなかったこと。
また、優績者に対しては、募集品質を実質的に問わずに人事上評価し、表彰を与える一方、目標未達者に対しては懲罰的な研修や強度の叱責が恒常化している状況を是正してこなかったこと。
こうしたことを通じ、コンプライアンス・顧客保護の意識を欠いた組織風土を助長したこと。
③ 脆弱な募集管理態勢
第一線である郵便局・支社・本社の営業部門及び第二線であるコンプライアンス統括部や募集品質改善部等のいずれにおいても、規模・特性に見合った募集管理態勢を整備してこなかったこと。
中でも、第一線での管理者は営業推進に注力し、形式的なチェック機能しか有しておらず、第二線は外形的な法令違反や社内ルール違反のみを自らの基本的な守備範囲と捉え、保険代理店として主体的な管理機能を果たしていなかったこと。
④ ガバナンスの機能不全
部門間で情報共有・連携が十分行われず、保険募集の実態が経営陣に報告されないなど、組織運営におけるコミュニケーションの不全を是正せず、営業現場の実態を把握してこなかったこと。
また、かんぽ生命による募集品質向上に向けた取組みやメディアの報道等により不適正な募集行為の端緒があった後も、十分な実態把握を行わず、抜本的な改善を図ってこなかったこと。
取締役会等においても、かんぽ生命から受託している保険商品の募集管理態勢や募集品質のみならず、かんぽ生命が2017年より開始した募集品質向上に向けた一連の取組みについても、乗換問題がメディアの報道等により広く取り上げられるまで議論を行わなかったこと。


(3)日本郵政
① グループガバナンスの機能不全
コンプライアンス委員会では、かんぽ生命及び日本郵便において不適正な募集行為が行われている端緒を把握していたにもかかわらず、十分な実態把握や対応を両社に対して指示してこなかったこと。
また、代理店手数料や営業目標の設定、募集品質の改善に向けた体制の構築や対策の策定等、かんぽ生命と日本郵便の両社に跨り、募集品質に重要な影響を与える経営戦略の決定や内部統制の構築について、保険持株会社としての統括・調整機能を果たしてこなかったこと。
加えて、メディアによる報道や当局による報告徴求命令があったにもかかわらず、保険持株会社としてグループ各社を主導した対応を適切に行ってこなかったこと。
更には、2019年9月以前の営業自粛・再開については、経営上の重要な判断であるにもかかわらず、取締役会等に諮ることなく各社長間での非公式な会合で意思決定を行ったこと。
② グループコンプライアンスの不徹底
経営理念として「お客さま本位」「コンプライアンスの徹底」を掲げているにもかかわらず、グループ各社において、顧客の利益や経済合理性を顧みない契約が広がっていること、コンプライアンスについては形式的に法令や社内ルールを遵守すれば良いとする考え方が広がっていること、などの実態を把握しておらず、経営理念をグループ内に浸透させてこなかったこと。

 

 


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