住商リアルティ・マネジメント(株)に対する検査結果に基づく勧告について

令和7年11月11日
引用元:証券取引等監視委員会

 

1.勧告の内容

証券取引等監視委員会が住商リアルティ・マネジメント株式会社(東京都中央区、資本金1億5000万円、常勤役職員78名、投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

 

2.事実確認

○ 投資法人のために忠実に投資運用業を行っていない状況
 住商リアルティ・マネジメント株式会社(以下「当社」という。)は、SCリアルティプライベート投資法人(東京都中央区、以下「本投資法人」という。)との間で本投資法人の資産の運用に係る委託契約を締結しているところ、当社が当社の親会社から本投資法人に取得させた不動産(以下「本物件」という。)について、その不動産鑑定評価を依頼するに際し、以下のとおり、利益相反管理の観点から不適切な行為が認められた。

 

(1)不適切な不動産鑑定業者選定プロセス
 当社は、利益相反取引の弊害を排除し、投資家の利益を保護することを目的として、内規において、親会社等の利害関係者が保有する不動産を本投資法人に取得させる場合の価格は、投資信託及び投資法人に関する法律第201条第1項の規定に基づく不動産の鑑定評価の額を物件取得額の上限としている。また、不動産鑑定評価の取得に当たっては、その中立性・客観性を担保するため、業界内における不動産証券化に係る受注実績等の客観的な基準に基づき、社内稟議を経て不動産鑑定業者を選定した後、依頼した不動産鑑定業者へ物件資料を提供することによって不動産鑑定評価書を取得するとしている。
 こうした中、当社は、複数の不動産鑑定業者に「利回り感」や「更地価格」等のヒアリングを行い、当該ヒアリングを踏まえた本物件の価格水準(自己査定)が、親会社から提示された他社の取得希望価格とする価格(以下「親会社からの提示価格」という。)に満たないことを把握すると、上記内規が定める方法に反し、社内稟議により不動産鑑定業者を選定する前の段階から、これらとは別の不動産鑑定業者(以下「当該不動産鑑定業者」という。)に物件情報を提供して概算鑑定額を聴取した。聴取の結果、当該概算鑑定額が上記自己査定額を上回ることを把握すると、当社は当該不動産鑑定業者へ依頼することを前提として、社内稟議の外形を整えたうえで当該不動産鑑定業者を選定した。これは、親会社からの提示価格を満たす不動産鑑定評価額を得ることを目的とした不適切な不動産鑑定業者選定プロセスであると認められる。

 

(2)不動産鑑定業者への不適切な働きかけ
 当社は、当該不動産鑑定業者から聴取した概算鑑定額が上記自己査定額を上回りつつも親会社からの提示価格に満たないことを把握した。
 そこで、当社は、現行の賃貸借契約が終了する将来の時点における使用方法について、現況と異なる用途の図面を作成のうえ当該不動産鑑定業者へ提供し、同図面に沿った物件利用を想定するよう働きかけを行った。その結果、当社は上記⑴において聴取した概算鑑定額を更に上回る不動産鑑定評価額を取得した。
 こうした行為は、一般的に許容される不動産鑑定業者への情報提供(現況図面、現行賃料及び物件管理費等)や意見交換(客観的な情報に基づいた将来の賃料上昇や空室率の見込み等)を逸脱した恣意的なものであり、不動産鑑定業者への不適切な働きかけであると認められる。

 

 上記のとおり、当社は、親会社からの提示価格を踏まえて、本物件の取得を目的として必要な不動産鑑定評価額の水準を満たすために、その目的に沿った対応が期待される不動産鑑定業者を探索し、これを選定したうえ、当該不動産鑑定業者に対して不適切な働きかけを行い、そのうえで算定された不動産鑑定評価額を基準に物件取得を行っている。これは、利害関係者以外の者による不動産鑑定評価により利益相反取引の弊害を排除し、投資家の利益を保護しようとする内規の趣旨を損ねるものであって、本投資法人のために忠実に投資運用業を行っていない状況にあり、投資家保護上重大な問題があると認められる。
 上記行為は、利害関係者である親会社からの物件取得にあたり、恣意性の排除が特に重要な不動産鑑定業者の選定プロセスにおいて、コンプライアンス室のけん制機能が十分に発揮されていなかったこと、また、当社の役員が親会社からの出向者で占められている中、当社の役員が本物件の取得に必要以上に介入していたことに起因するものであり、当社の利益相反管理態勢は著しく不十分であると認められる。
 このように、当社は、本投資法人のために忠実に投資運用業を行っていないことから、金融商品取引法第42条第1項に定める「忠実義務」に違反するものと認められる。

 

 

(参考条文)

○ 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)
(権利者に対する義務)
第四十二条 金融商品取引業者等は、権利者(次の各号に掲げる業務の区分に応じ当該各号に定める者をいう。以下この款において同じ。)のため忠実に投資運用業を行わなければならない。
一 第二条第八項第十二号に掲げる行為を行う業務 同号イ又はロに掲げる契約の相手方
二・三 (略)
2 (略)

 

○ 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26年法律第198号)(抄)
(特定資産の価格等の調査)
第二百一条 資産運用会社は、資産の運用を行う投資法人について特定資産(土地若しくは建物又はこれらに関する権利若しくは資産であつて政令で定めるものに限る。)の取得又は譲渡が行われたときは、内閣府令で定めるところにより、当該特定資産に係る不動産の鑑定評価を、不動産鑑定士であつて利害関係人等(当該資産運用会社の総株主の議決権の過半数を保有していることその他の当該資産運用会社と密接な関係を有する者として政令で定める者をいう。次項、次条第一項及び第二百三条第二項において同じ。)でないものに行わせなければならない。ただし、当該取得又は譲渡に先立つて当該鑑定評価を行わせている場合は、この限りでない。
2 (略)

 

 

   

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